Key作品の感想など

原点回帰としての第四章後編

ヘブバン第四章後編についてふと思ったこと。(ネタバレ有)

麻枝さんはティーンの物語を描きつつ彼らに関わる大人を描くのが抜群に上手い作家で、初期作では家庭や町の大人との関わりが作品の肝であり旨みになっていたけど、リトルバスターズ!以降は大人のいない学園で物語が完結し、大人との対話で得られない変化は学園からの逃避を経て成されることが多かったと思う。

ヘブバンは基地に大人の影がほぼないリトバス型の世界観で今のところ描かれている。その内部で解決できないほどの痛みに直面したら逃避が必要になるけど、子供だけで閉じこもれる場所が戦時の基地の外にはない。

それで、第四章において自身の根幹を折られた彼女は単に基地=リトバス以降の学園の外の世界ではなく、大人のいる町=AIRCLANNAD的世界にまで回帰し逃げ込まなければならなかった。そこで老若男女の家族や住民と対話することが必要だった。

更にCLANNAD/智代アフターが成したように、大人と対話するだけでなく自分が大人の立場として子供と対話する必要もあった。そうやって過ごす一日一日は彼女の視座を大きく変えることになったし、大人たちそのものがやはりすごく魅力的だった。

麻枝さんのいちファンとして、第四章後編が原点回帰の感触で涙腺にクリティカルヒットしたのはその部分が大きいと思う。

彼女の物語を解決不能としたり基地内でなんとなく解決したりせず、解決できる世界の方を自身の原点から彼女のためだけに持ってくる麻枝さん、そんなこと普通思いつかないし愛情が深すぎる。

そして彼女の生き様はある意味、大病から生還してヘブバンで世を救っている麻枝さん自身にも通ずるような光を纏っている。